七転び八起き

ハロプロと、恋人のキツネさんとの同性同士の同棲生活。

忘れられない演出(ものすごく今更ながらグランドホテル感想)

グランドホテル

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ミュージカル『グランドホテル』GREENの舞台映像ダイジェスト公開! | ACTRESS PRESS

春先にグランドホテルという舞台を観に行きまして。噛めば噛むほど味が出る式に、今更になって、良かったなぁ、と思うんです。ああいう本格海外ミュージカル日本版的なやつに苦手意識があって、観た当時は「うーん、悪くはなかった…けど…ぴったりこない…」って感じだったんです。わかりやすいハッピーエンドものでもないし。でも、時々思い出すんですよね。で、思い出すごとに「うん、やっぱり良かった」って思い直すというか。

今回改めてそう思ったきっかけは、サラ・ベルナールという舞台を観たこと。感想を別のブログで書きましたけれど、椿の赤い花びらを散らすシーンがあるんですよね。で、グランドホテルにも赤いバラを散らすシーンがあったのでまた思い出して、「うん、やっぱりグランドホテル良かった」って思ったんです。

あ、ちなみにREDバージョンとGREENバージョンがあるんですが、わたしはGREENを見ました。両方の動画を見ましたけど、GREENの方は特に歌がうまいメンツを集めた感じで、歌的には最高でした。

ゲネプロ動画、良かったらご覧になってください。

 

あらすじ

もともとは小説で、映画化されたものが有名なんですよね。群像劇的映画のはしりらしいです。あらすじはホームページから引用します。

1920年代ベルリン。様々な人間のドラマが交差する豪華ホテルの一夜を描いたミュージカル『グランドホテル』。
若く美しく、だが貧しいフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は、ギャングによる借金の取り立てから逃げている。帝政ロシアで一世を風靡したバレリーナ、グルシンスカヤは座員を養う引退興行のためにベルリンへ。重い病を患う会計士、オットー・クリンゲラインは、これまでの貯金を全て使って、人生の最期の日々を豪華なホテルで過ごそうとしていた。傾きかけた織物工場の娘婿社長プライジングは、会社を立て直す会合のためにホテルへ。ハリウッドでスターになることを夢に見るタイピストのフレムシェンはプライジング社長の私設秘書に誘われる。偶然にもグランドホテルで出会い、それぞれの人生が変わるような一夜を過ごす。
「グランドホテル、ベルリン。いつも変わらない。誰かが来て、誰かが去っていく。ひとつの命が終わり、ひとつの命が生まれる……。ひとつの心が引き裂かれ、ひとつの心が高鳴る……。ひとりの男が牢獄へ行き、ひとりの男がパリへ旅立つ。いつも変わらない。時は過ぎる、淡々と。人生も回り続ける。グルグル、グルグルと……。では、もう一日、いるとしようか。」

引用元:ABOUT - ミュージカル『グランドホテル』 

 

男爵の死のシーン

※念のため。ここからネタバレありです。

この作品の中で特に印象的なのは男爵の死のシーン。引退直前のバレリーナ、グルシンスカヤは自分がもう若くないことを知って悩んでいるんですけど、若くて美しい、でもお金がない男爵が借金の返済のためにお金持ちのグルシンスカヤの部屋に盗みに入るんです。そこでばったり出会ってしまった二人は恋に落ちる。

それまではほんとクソみたいな男だなーと思って観てたんですけど、「君に出会って生まれ変わった」と自分自身言うように、恋に落ちてからの男爵はほんとうに真摯で素敵なんです。

男爵を演じる宮原浩暢さんが、また上品な感じのいい男なんですよね…。体格も含めてすごく姿のいい人。歌もものすごくうまい。あのツルッとした感じのお顔も貴族っぽい。

でも、男爵は最後、事業がうまくいかずヤケになったプライジングがフレムシェンに手を出そうとするところを止めに入って、撃たれて死んでしまうんです。グルシンスカヤと翌日朝、一緒に旅立つ約束をしたにも関わらず…。

男爵の死のシーンでは、「死」の象徴である湖月わたるさんと男爵が二人で妖艶で激しいダンスを踊ったあと、他の演者さんがみんな列になって花道を作って、そこを男爵がゆっくりゆっくりと通り抜けていくんです。そこで、男爵が通り過ぎるタイミングで、ぱっ、ぱっ、て横にいる花道を作ってる人が順に薔薇の花びらを投げるんです。なので男爵が通るあとの道にどんどん花びらが降り積もっていく。これがね…すごく美しくて。魂だけになった男爵が死につながる道を歩いていくって感じがしました。ずっと、全体に花びらを降らせてるわけじゃないから最小限だし、人力でやっているのに、こんなに粋な演出ができるんだ…と驚きました。

 

忘れられない演出

男爵の死のシーンはもう本当に、忘れられないシーンです。なにかにつけて思い出しますし、たまにまた観たいな…と思います。

グランドホテルは他にもたくさん印象的なシーンがあって。冒頭のくるくる中央の階段部分が回るシーンは次に死ぬ人を決めるルーレットで、実は「死」が男爵を指差しているっていう話を知って鳥肌が立ったこともありました。

グランドホテルの宿泊客たちが机の上に乗って移動しながら電話かけてるシーンもそれぞれの事情を感じさせつつグランドホテルの忙しさも見せられている感じで面白い。

男爵とグルシンスカヤのシーンはどのシーンもうっとりします。その一方で一人きりになったグルシンスカヤの付き人でグルシンスカヤにずっと想いを寄せている女性がグルシンスカヤの部屋に男爵が残していったコートを着てタバコを吸うシーンも切なくて…でもかっこよくて…すごい…。

いくつものシーンが、たった一回見ただけなのに頭にこびりついて離れないんですよね。忘れられない。モヤモヤする終わり方なんですけどね…ものすごく…。ストーリーは幸せじゃない、現実をつきつけられる感じで…観た後ずーんとした気持ちになるんですけど。

もし再演があったらまたぜひ観に行きたいです。