七転び八起き

ハロプロと、恋人のキツネさんとの同性同士の同棲生活。

【観劇感想】スマイルマーメイド ネタバレあり

f:id:ao-re:20161219194139j:image

舞台「スマイルマーメイド」公式サイト

スマイルマーメイド、千秋楽から少し間があいてしまいましたが、観た直後はネタバレなしの感想を書いたので改めてちゃんとした感想を書こうと思います。一回しか観劇せず、ニコ生配信も見る前に書くので、台詞とかうろ覚えでごめんなさい!

 

DVD買うまでネタバレダメ絶対!な方はここから先はご遠慮くださいね。

 

あらすじの復習 

と、感想に行く前に簡単にあらすじの復習。

人魚マリナ(蒼井翔太)は、
海神ポセイドン(唐橋充)と
その妻ジュジュ(秋本奈緒美)の庇護の元、
幸せに暮らしていた。
サメの王子、ルカ(宮城紘大)との
婚姻が進められていることを除けば…。
ある日マリナはいつものように唯一の友人、
ドーフィン(原田優一)を伴って
海底で歌を歌う。
ところが、たまたま海上を
クルージングしていた心清き青年、
ケント(荒木宏文)と
その飼い犬パブロ(加藤清史郎)が、
彼女の歌の持つ不思議な力によって
海中へと引き寄せられてしまう。
彼を救ったマリナは
たちまち彼と恋に落ちるが…。
数々の想い、すれ違い…。
海の魔女スネイキア(吉田メタル)の策謀により
さらに複雑に絡み合うマリナとケントの恋心。
新説『人魚姫』、
究極の愛の物語、ここに開幕!

イントロダクション|舞台「スマイルマーメイド」公式サイト より引用

こんな感じの物語です。【新説】と書かれているだけあって、わたしたちのよく知る、泡になって消える人魚姫のはかない物語ではありません。実はこの主人公マリナ、めちゃくちゃ強いんです。強く美しく、人外のものであるからこその狂気を秘めた人魚姫、という印象でした。

 

人間と話したことがあるのですか?というマリナの問い

ケントと出会い、速攻で惹かれあったマリナ。人間と関わることは海の掟で禁止されているので、ルカとの婚約をなにごともなかったかのように進めながら、裏ではケントとの駆け落ち計画を立てているのですが、怪しい動きに気づいたルカによって、計画がポセイドン様とジュジュ様にも暴露されてしまいます。

怒ったポセイドン様とジュジュ様に野蛮な人間であるケント王子との関係を断つように言われたマリナは、二人に「ではお母様とお父様は人間と話したことがあるのですか?」と問いかけます。この台詞が、わたしには突き刺さりました。バイで女の子と付き合ってるわたしが、差別的な言動をする人に対して思うことと同じだったからです。

差別的な言動をする人は、カテゴリを見てその人を見ません。そして平気で「同性愛なんて気持ち悪い」とか「嫌い」とか言います。「話したことがあるの?」「分かり合おうとしたことがあるの?」と問いかけても拒絶します。

たとえば、わたしは、私が同性を好きになることを親にカミングアウトしていないんですけれど、なんとなく今の彼女との関係に親は気づいているようです。そして会ったこともないのに彼女のことを嫌っています。ルームシェアをすることになったから紹介すると言ったら、即座に「会いたくない」と母は言いました。引き裂かれるような、とても悲しい気持ちになりました。彼女の人間性も知らずにイメージだけで拒絶されることが、悲しかった。私の愛する人は、とってもいい子なのに。なんで?って。その時のことと、マリナがポセイドンとジュジュに拒絶される様が重なって、胸がざわざわしました。そんな風に、自分と重ねる部分があるから、この作品はなんだか私にとって特別なんです。

 

ヤンデレ発動と剣を掲げるマリナの女神感

そうして牢獄につながれたマリナは魔女に出会います。 魔女は愛をキラキラした優しいものと信じるマリナに、愛の別の側面を教えます。愛は憎しみや嫉妬を生むものでもあると。そしてマリナが牢獄につながれている間に別の女とダンスをしているケントの姿を見せ、マリナがその女を殺すように誘惑します。

このシーン、凄かった。マリナを演じる蒼井翔太さんの演技のふり幅が物凄くて圧倒されました。最初は魔女に抵抗して威厳ある姿を見せつけるんですけど、だんだん魔女の言葉に絡めとられていって。乱れて。「殺す?殺す?殺す!?」って叫んでいる姿が、最高に怖かった。嫉妬に狂う姿を縄を巧みに使ったダンスで表現するところも、おそろしかった。

そしてすったもんだした挙句、パブロの犠牲によって解き放たれケントのもとへと行けることになるのですが、このケントのもとに向かうマリナの姿がまた凄味があって。ケントの船が波にのまれて、マリナが姿を現すんですけど、でっかい剣を高く掲げた姿なんですよね…。圧倒的女神感です。女神って、美しくて優しくて、恵みをもたらすだけじゃなくて、怒らせるとものすごい大変な天災を起こしたりするじゃないですか。そういうイメージ。美しくも恐ろしかった…。

 

人間の三日間と人魚の三日間の違い

でもケントは追いかけてきたマリナに対して「待っていたのに君は来なかった」「丸三日間かけて君をあきらめたのに」って言うんですよね…。 このシーンを最初にみたときはなんて浮気でこらえ性のないダメ男なんだって思ったんです。マリナに「掟なんて破ってしまえばいい」って言ってすべてを捨てさせたくせに、そんなことを言うのかと。でも、ラストシーンに至ってから改めて思い出すと、そういうことじゃないかもしれないってふと気づきました。あのシーンは、人間の寿命と人魚の寿命の違いを示すシーンだったんじゃないかって。

きっとマリナにとってもケントに会えなかった3日間は辛いもので、長く感じたことでしょう。それでも、人間の短い寿命の中での3日間は、マリナの感じる3日間よりずっとずっと重いものだったんじゃないでしょうか。そう思うとまたつらい…。この二人の生き方や感覚の違いを思い知らされるようで…。

結局、「あなたに愛されなければ意味がない。私を殺して」ってヤンデレ発動で迫るマリナにほだされてケントは海で暮らすことになるんですけれど、この感じ方の差を埋めていくことってとってもとっても大変なことで、二人で暮らしていく中でももしかするとたくさんの感覚の違いを感じたんじゃないかって思ってしまいます…。

 

ラストシーンのさびしさ

そこからの、ラストシーン。衝撃的でした。本当に。

あまりに衝撃的で、直後にこんなことを呟いてしまいました。

ラストシーンでは、特に説明もなく、宙につられたブランコみたいなものにマリナが座っていて、ひざに抱えたしゃれこうべを愛しげに微笑みながら撫でているんです。「眠れよ永久に」って歌いながら。たった一人で。背後にはプランクトンなのか泡なのか、キラキラしたものが降っていてすごく綺麗で。『あっ』て思いました。そういえば人魚の肉を食べると不死になれるっていいますもんね…。ケントの方が先に死んでしまったっていうシーンなんだって理解して、なんともいえない気持ちになりました。

このシーン、歌うマリナの横で、セットの海藻がひとつずつぱさっ、ぱさっって落ちていくんですよね…。なんだか時の流れや衰退したラグーナ王国を思わせるようで…。なんともいえないさびしい気持ちになりました。でも魅入られたように、このシーンをずっと見つめていたいっていう気持ちもあって…。すごく惹かれるシーンでした…。

マリナはケントと一緒にいるためにすべてを捨てて、だからこそこんな暗いところでたった一人で生きなければならない…。あんなに彼女を愛している人が周りにたくさんいたのに…。そう思うと辛くて…。でもきっと愛を選んだ彼女には一つも後悔はなくって、幸せそうなんですよ…。ある意味しあわせな終わり方なんだと思うんです。でも、それはさびしいよ…。さびしいって、思ってしまうよ…どうしても…。

少し前に自分とマリナを重ねてしまうところがあると書きましたが、ここでもそう思いました。だって私たちだって、親からも兄弟からも理解されずたったふたりで生きていかなきゃならない可能性だってあるんです。わたしたちは女同士だから子供だってできないし。二人でいればそりゃあ幸せです。他に何もいらないって思います。でもやっぱり、さびしい…。なんとかみんなで幸せになる手はなかったのか、本当に捨てなければならなかったのか、って思いました。マリナには無理だったのかもしれませんけれど、わたしはカミングアウトして理解されなくても、諦めずにみんなで幸せになる道を探したいって、思ってしまいました…。あのラストシーンを見てから、ずっとモヤモヤしています。

 

どうしてあのラストシーンに至ったのか?

でも、あのラストシーンに至るまでに、なにがあったんでしょうね。ケントが海に引き込まれてキャッキャウフフしてたかと思ったらいきなり死後に時間が飛ぶので。

幸せに暮らしてケントが寿命を終えたっていう見方もできます。でも、幸せじゃない死に方だった可能性もあるよなとか考えてしまいます。

人魚と人間の感覚の違いについて書きましたけれど、ケントは海の中の暮らしが嫌になって泣きわめいたり帰りたがったりしていそうだなと。それでヤンデレマリナ様に殺されてたりして…。ううっ。こわい。殺されなくてもまた『わたしを愛してないなら殺して』は言われてそう…。ケントは中途半端に優しいからそういうこと言われちゃうと逃げられなくなるんだきっと…。

 

あなたの愛とは

そんなこんなで、愛や、愛の行き着く先についてすごく考えさせられる作品でした。DVD予約、その場で現金全額払いだったんですけど速攻で買いました。もう一度見たい…。DVDでじっくり登場人物の表情含めてこのお話を見たい…。わたしも人魚の魔力に囚われてしまったようです。

今回のブログはマリナとケントの愛について書きましたが本当にいろんな形の愛が表現されたお話なので、見た人はひとつくらいは共感する愛の形があるんじゃないかなと思うんです。いずれレジェンドステージ公式でもDVD売るはずですし、ニコ生でも1月末まで配信してるみたいです。よかったらぜひ、見てみてください。

https://secure.live.nicovideo.jp/event/smile-mermaid