七転び八起き

ハロプロと、恋人のキツネさんとの同性同士の同棲生活。

【舞台感想】サラ・ベルナール〜命が命を生むとき〜10/13ソワレ

サラ・ベルナール見てきたよ

少し日数が経ってしまいましたが、先日、久々に舞台を見にいきました。やっぱり舞台っていいですね。全身で世界観に浸れるあの感じ。特に、パリ万博のころの舞台設定だからこそ、その世界観に没入してからはうっとりとしながら見てしまいました。

こういう、個人に焦点を当てたストーリーって実はそんなに得意ではなくて。特に、実在した個人の話は。でも、サラ・ベルナールはわりと良かったかなぁ。圧倒的な主人公力で、彼女がそこにいて動いて話してるだけで、なんだかポーッとしてしまう感じ。お洋服の美しさが、それをより一層高めていて。そして彼女の華やかさも恋も激しさも痛々しいほどの苦悩も、なんだか惹きつけられるものがありました。

 

主人公、サラ・ベルナールの人生と、椿の花

 サラ・ベルナールは高級娼婦で舞台女優。性に奔放で「お友達になる一番の方法は、寝ること」と言って憚りません。す、すごい。アグレッシブ。

舞台が始まってすぐのシーンがとても印象的に彼女のことを表していると思うんですけど、棺桶に入った彼女が真っ白な花々に囲まれて真っ白なドレスに身を包んで眠っているんです。これ、比喩じゃなくってほんとに眠ってるんです。棺桶をベッドがわりに使って、美しく装って眠る、そのエピソードだけでも彼女の強烈な個性を感じさせます。冒頭はそんな彼女の華やかな生活と、成功の道筋の話。

後半はサラの愛と苦悩の話でした。サラは同じく娼婦だった母に複雑な思いを抱いていて。母のようにはなりたくない、と夫ダマラをどんなことがあっても愛し続けることを誓います。彼女が印象深く演じた、椿姫のように。

もーこの、ダマラがほんっとーに駄目な男で!ヤク中だし女にはだらしないし!金遣いも荒い!サラがものすごい人だからその夫であることと常に比較されることのプレッシャーは確かにあったと思いますけど、だからって暴力をふるっていいわけではない!ほんと最悪!

そんな駄目男であっても一度愛し抜くと決めたからにはサラは最後まで尽くしてしまうし、立ち直らせようとするんですよね…つらい…。

ダマラが亡くなるシーンでは、椿の花の赤い花びらが、ダマラが去った後の通路にずっと降り注ぐんです。美しかった。その後、友人が去り、または亡くなり、ずっと一緒にやってきた興行主も去り、本当にラストのシーンでは赤い花びらがずっと降り注ぐ中、サラは代表作のハムレットの舞台に立ちます。ハムレットのセリフが途中でフェードアウトし、彼女はずっと愛してくれていた観客のために、舞台に立ちつづけることを語るんですよね。うまく言えないですけど、真っ赤な椿の花びらが彼女自身の激しさや、激動の人生や、彼女自身の最後の決意を語っているようで、胸がざわざわしました。

 

脇役も、とてもイイ舞台だった

サラ・ベルナール個人のカリスマ性ももちろんね、ありましたけど。周りのみんなもとっても良かった。ここからは特に好きな方の感想を。

 

伊崎くん

癒し系こじらせ文化人眼鏡さんだった。画家クレラン役で、カメラマンのパロと仲良し。俺たちはサラのことを永遠に愛するよな、みたいなことを言ってくるような、わりと熱いパロに対して、少し憂いを帯びた声で「ああ」って返す感じ。この返事の仕方がものすごく素敵で好き。芸術のことになると熱くなるのもいい。

見た目も素敵で眼鏡好きな私としては、彼が舞台上にいるとついつい見てしまってました。天羽くんと真逆の側にいる時が多くて目線の移動が忙しかった。

いつも冷静でちょっと憂いを帯びている彼が、サラの付き人役のルイーズとのアバンチュールではめっっっちゃ可愛らしく「がおー!」とかって言いながら追いかけっこしてるの、ものっっすごい可愛かった。

 

古谷さん

カメラマンのパロ役。なんだか可愛いひとだなと思った。あとでお写真見てみたらなかなかのイケメン…。この天羽くんツイートの真ん中の方。

暴力を振るわれたサラを見て激昂して、無力感からすすり泣くシーンが、ほんとこのこ、いいこだなぁ、と思わせる感じで好きでした。ちょこちょこボケを入れてくるのも面白くて、そんなに軽くない話なのに彼が空気を軽くしてくれてたなぁと思います。

クレランがサラの絵を描く準備を手伝うようにパロにいいつけたときポージングしだしてクレランに怒られるところ、めっちゃ可愛かったです。

 

天羽くん

 中央右の金髪の子。男の子だなんて信じられない…!すごくエレガントで立ってるだけで様になるの!!彼が付き人然として隅に佇んでいたり、ワイングラス片付けてたりするの、もうずーーーーっと眺めていられる。最高に素敵。

その上、伊崎くんのクレランとのシーンでは、キャッキャうふふしながら鬼ごっこして、最後にこのきっちり結われた髪の毛をばさーって解いて、誘惑するの!!一言も台詞話さないのに、もうすんごーく色っぽい。目線と仕草で人を誘惑できる、あの才能。素晴らしすぎる。

これまでもちょこちょこ、プリンスカグヤや贋作好色一代男やなんかで、彼のことを見てきたけどこれからも天羽くんの出てる舞台は見たいなぁと思ってしまいました。すごく役への憑依度も高い方のように思うし、これからがとっても楽しみです。

 

舘形さん

相変わらずこの方もただ立っていたり歩いていたりするだけで美しい。シュッとしてるのに筋肉が感じられるというか。こんなにエレガントに燕尾服を着こなせる方はなかなかいないと思います。

彼の役は後にゲイとして投獄された、オスカー・ワイルド。若き日にサラに詩を捧げ、詩人として成功してから再会、友人として彼女のことを慕っている役。サラとのダンスシーンは流石の一言。美しい身のこなしが本当に大好き。

彼は何度もサラに迫られるけれどすんでのところでキスを受け流すんですよね。彼はゲイだから…。その表情が美しくも辛くて…。彼がゲイであることをサラは受け入れるけれど、彼はそのままサラに別れを告げて去っていく。これも辛い…。そのことがわかる前の段階で「お慕い申し上げております」とサラに言い続けるのも、苦しい。

きっとオスカーは、サラの美しさや演技にある意味では本当に惚れていたのだと思うんです。恋愛的にも好きになれたら良かったって、きっと思ってたと思うんです。だからこそ誘われることがわかってても友人として通って…。でも最後まで、彼女のキスを受け入れることができなかった…。どれだけショックだっただろうと思います。自分を責めて、なんでこんな時代に、こんな風に生まれてしまったんだろうって思ってしまって、サラが受け入れてくれても、自分で自分を受け入れられなかったんじゃないかと思いました。

ああ…それにしても、何度も何度も言いますけれど幸せなゲイやビアンの出てくる作品が見たい…。本当に。

 

コングさん

ソングライターズの頃からたまにお見かけするコング桑田さん。今回もいい味わいを出していらっしゃいました。あの体型であの見た目、今回は優しい感じの口調。なんだかコミカルで可愛かったです。

 

でも演出がちょっと野暮ったい…ような…

ここまでさも良さげに語ってきてなんなんですが、ちょっとだけ、演出が好みとあわなかったんですよね…。

例えば結構誰かが喋ってる時に誰かが重ねるように喋ってきて遮るシーンが、結構あって。それを見るたびにムズムズしました。なにを言いかけていたのか気になる…そして音として耳触り…。誰しも自分が話を遮られたら気持ち悪い思いをすると思うんですけど登場人物のその気持ちを観る方にまで感じさせてしまうというか…。

更に気になったのが、最初の方で美しかったと申し上げた、ラストの椿の花びらが降り注ぐシーン。もうずーっと、ずーっと降り注いでるんです。時間にして10分以上あるんじゃないかな…?美しいんですけど、ちょっと過剰な気がして。最初は見惚れたんですけど、あれだけずーっと降ってると胸焼けしてしまいました。あとで別の記事で書きますけど、別の舞台で、似たような花びらの降り注ぐシーンを、もっと洗練された形で見てしまっていたせいか、野暮ったく見えてしまいました。

演出が合わないとちょこちょこ集中力を削がれるので、そこだけちょっと残念。

 

命が命を生む、という副題の意味

最後に。やっぱりラストシーンのサラのあり方が、今回の舞台では一番印象的でした。愛を求め、最後には板の上に愛を見出す、彼女の姿を見ていて、やっぱり人は社会とのつながりの中でしか生きられないのかもなぁ、と思いました。個人の愛は、裏切ることもあるし、どんなに良いパートナーや家族に囲まれていたとしても、いつか死んでしまって一人になるかもしれない。そんな時、サラにとっては最後まで拍手を投げかけて、愛してくれた観客が支えになったけれど、わたしたちもきっとそうで、仕事をしたり、誰かのために動いたり、言葉を紡いだりして、それが人の心を震わせ役に立って、そのことがいつしか支えになっていくんだなぁ、と思いました。

サラ・ベルナールの「命が命を生む。エネルギーがエネルギーを生む。人が豊かになるのは自分自身を投じることによってである」という言葉の意味をじっくり考えさせられる物語でした。