七転び八起き

ハロプロと、恋人のキツネさんとの同性同士の同棲生活。

【読書感想】春琴抄〜お耽美な主従物語。極上文学が見たくてたまらない〜

極上文学が気になっていて、春琴抄買いました。

 文学少女気取ってたくせに三十路手前まで春琴抄はちゃんと読んでなかったとかお恥ずかしい限り。 なんか本読みたいな〜と思って本屋をふらついていて、目に付いたので買ってみました。もちろん、目に付いた理由は極上文学でふじわらさんが春琴抄の佐助役演ってたからなんですけどね。このミーハー心、自分でも笑っちゃうわ。

春琴抄 (新潮文庫)

春琴抄 (新潮文庫)

 

リアルに買ったのは角川のやつ。表紙はこっちの方がかわいい。帯の文句もそそる。いいところ抜粋しやがって。憎いぜ。

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あらすじ

あらすじは、まあ有名な作品なので皆さんご存知かと思いますけれども。三味線や琴の名手である春琴と、春琴に仕える佐助の関係の話。マゾヒズム文学としても知られていて、熱湯を浴びせかけられて美しい顔に傷を負った春琴様が「この顔を見ないで」というので佐助が自ら針で目をついて失明するくだりが有名です。

 

わ、わかる…佐助のドM心…

実を言うとわたくしもわりと気持ち悪い感じのドMと人に言われます。そのせいか、わりと序盤から「佐助…気持ちめっちゃわかるで…」状態に。

佐助はほんと春琴様命で、佐助が著作にかかわったという春琴伝という本が作中に出てくるのだけど、そこでは「春琴様は容姿端麗にして高雅、琴や三味線で有名だけれどもほんとは踊りもすごくて小さい頃からめっちゃ妖艶で舞妓よりすごい。二人の兄より読み書きも上達が早かったしほんと春琴様神」みたいなノリ(意訳)。どんだけ春琴様のこと崇め奉ってるねん。でもわたしも好きな人に対してそういう感じになっちゃうところある。めっちゃわかる。佐助と違ってそういうの人前では吹聴しないけど。

佐助は「手曳き」と言って盲目の春琴お嬢様の手を引いてお稽古に連れてく役割を幼い頃からやっていたのだけど、その途中「暑い」って言い出した春琴を扇いであげるの。でも扇ぎ方がなってないとまた「暑い」ってただ一言春琴が言うから頑張ってまた扇いであげる。こういうのさ、疲れるんだけど嬉しいんだよね…その人のためになってると思うとさ…。で、たまに何のためにやってるんだっけとか思うんだけど体が動いちゃうんだよね…。

しかも春琴お嬢様がたまにご褒美くれるの。たとえば手曳きの役割を担う人は何人かいたのだけど佐助だけにやらせるようにして欲しいって言ってくれたり、春琴にちょっとでも近づきたくて奉公のあいまを縫ってこっそり三味線の稽古してたのが春琴の両親にばれて怒られそうになった時に庇ってくれたりとかさ。アメとムチの使い分けの巧みな春琴お嬢様。たまらん。

一番印象的だったのが歯痛のシーン。佐助は普段から超冷え性の春琴お嬢様の脚をお布団に入って胸に抱いてあっためてあげてたんだけど、ある日ものすごい歯が痛くて、そんな中お布団に潜るものだから暑さでより歯が痛くなってしまって、思わず冷えた春琴様の脚を頬に当ててほっぺたであたため始めた。気づいて春琴激怒。佐助の頬を蹴り飛ばして「あたしは胸で暖めろとは言ったけど頬で暖めろとは言ってねぇんだよカス!盲目だからわからないと思ったか!」(意訳)とか言ってくる。このシーンさ、痛いんだけどさ、痛いんだけど…嬉しいよね…。春琴お嬢様への申し訳なさとひどい…!って思いとがぐるぐる渦巻きつつも、昏い満足というか、陶酔を覚えたんじゃないかと思うんだよ…。つらいし苦しいし痛いんだけど嬉しいんだよねこういう時…と、好きな人に踏まれたい、足蹴にされたい、という願望のあるわたしは思いました。佐助、気持ちめっちゃわかるで…。

 

妄想の文学

そしてそんな春琴なのですがわりと若い時に佐助の子と思しき子を妊娠するんですよね。でも佐助の子である事実を春琴はものすごい勢いで否定するし、当の佐助も、おそらくは春琴に口止めされていて、絶対に自分が父親だと口を割らない。彼らの閨房ごとについてはほとんど触れられない構成だからこそ、あの美しく、恐ろしく、気位の高い春琴様がどんな経緯で佐助に体を許したのか?それも彼女のワガママな遊びの一つだったのか?とか色々妄想が膨らんでしまいます。

全体的に春琴抄というのはそういう物語で、たとえば春琴の容姿についても伝聞の形でしか語られないのです。春琴の写真が冒頭に出てくるけれど「ぼやけていてハッキリとはわからない」という設定になっている。だからこそこちらの妄想がかき立てられるし、失明してから、春琴の容貌を脳内で反芻するしかなくなった佐助の見方を読者に追体験させる形になる。妄想文学、ですね。

しかし、春琴抄のマゾヒズム的なところも、妄想文学的な側面も、ほんとエロいと思います。若い頃は親や親戚に(しかも大抵は本を読まない人たちに)、ラノベなんかやめて純文学を読みなさいって言われたけれど、純文学の方がよっぽどヤバイ。倒錯的で美しくて、とても性的。

 

歪んでいるけど幸せな二人

春琴は本当に潔癖で、盲目なのでお風呂もトイレも人の手を借りないといけないのですが、佐助以外の人間に決して体を見せず触らせませんでした。そして、盲目になってもそんな彼女の体を手探りで丹念に洗いあげる佐助。このシーンに、二人の幸せの形を見た気がします。

人の恨みを買いがちな高慢お嬢様、春琴は、賊に熱湯をかけられたあと、佐助にだけは崩れた顔を見られたくないと懇願します。そのシーンでは、春琴も佐助のことを一人の女として愛していたんだなぁということを突きつけられた気がしました。そして佐助が針で目をつき、春琴が願った通り、美しかった頃の彼女の姿だけを覚えて生涯彼女に尽くすことを決め、それを報告した時に春琴の声が歓喜に打ち震えて聞こえた、というくだりは、不思議に美しく、なぜか感動的で。佐助、ほんとに想いが通じて良かった…と佐助側に感情移入しがちなわたしは思ってしまいました。

そんな二人は、結局生涯を添い遂げるけれども夫婦にはならず、死んでからも二人の墓石が別々に、少し離れて並ぶんですよね。お嬢様と奉公人の関係、そして師弟の関係を最後まで守り切った。外からは歪に見えるかもしれないけれど、そのあり方を守り切って死んだ二人はきっと幸せだったのでしょう。

 

極上文学、見たいよぉ〜!

てなわけで。そんなマゾヒストで春琴様命の佐助をふじわらさんが演じていたと。その上感想ブログなんかを拝見する限りでは、だいぶ気持ち悪い感じに演じきっていたと。うっとりした目で春琴様を見つめるふじわら佐助とか見たいに決まってるよ!ビジュアルも素敵だし!DVDほしい!

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引用元: ■10th<shunkin-sho> - MAG.net 公式サイト

その上、春琴様がめっちゃ可愛がってる鶯の役の方もいらっしゃるとか。確かに鶯は本作を彩る大切な役割を持っているし、鶯の鳴く声ヒントを得て春琴が作った曲、春鶯囀(しゅんおうてん)の描写は物語の最後を飾る大切なパートですけれども。(わたしは春鶯囀の描写が美しすぎて何度も何度もそこを読み返してしまった。覚えたいくらい大好きです)

でも鶯を演じるってなんなの。どんな感じなの。めっちゃ気になります。

※後日DVDは予約しました。これもほしい。

本格文學朗読演劇『極上文學』クロニクル

本格文學朗読演劇『極上文學』クロニクル

 

 

他の谷崎文学も気になるよぉ〜!

 そして谷崎代表作の春琴抄がこんなにハマるってことは他の作品もきっと合うに違いない!と思っていて、めっちゃ読みたいです。特に、マゾヒズム小説集は表紙も可愛いし、ほしい。あと、ビアン小説としても有名な卍もめっちゃ読みたいです。

このへん、読みたいやつ↓

谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)

谷崎潤一郎マゾヒズム小説集 (集英社文庫)

 
卍 (新潮文庫)

卍 (新潮文庫)

 
蓼喰う虫 (新潮文庫)

蓼喰う虫 (新潮文庫)

 
猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

猫と庄造と二人のおんな (新潮文庫)

 

また楽しみが増えてしまった!嬉しい悲鳴!