七転び八起き

ハロプロと、恋人のキツネさんとの同性同士の同棲生活。

同性でも、結婚したい。

最近もう、ものすごく、結婚したい。
パートナーはいる。長年付き合っている大切なひとが。
家もある。かわいい猫ちゃんたちと一緒に暮らしてもいる。
ただ、結婚という制度だけがない。

 

自分がここまで結婚したいと思うと思わなかった。今までは「結婚」という制度に苦しめられてきているという思いが強かったから。5年前の記事はこちら。(ところで5年もブログやってるんですね、今気づいてびっくりした。最近ブログリニューアルしたくて仕方ないのだけどこうして思考の軌跡を辿れるのはいいな。)

www.nanakorobiyaoki-sui.com

 

おそらく「私も歳を取った」ということなんだと思う。そして、知識が増えた。
5年前はまだまだ若かった。家も買っていなかったし、猫とも暮らしていなかった。実家へのカミングアウトもしていなかった。
けれど三十代になってそういったライフイベントを通り過ぎて、「その後のこと」をよく考えるようになった。

 

パートナーのキツネさんとは歳の差がある。彼女はもう何年かすると四十代になる。
私だってそう遠くない未来にそうなる。
いままでは、若くて健康だったからいい。
でも、今、どちらかが倒れたら。病気になったら。突然意識がなくなったら。
私たちは互いの病状をお医者さんから聞くことができないかもしれない。死目に会えないかもしれない。
そういう危機感が、本当に身近なものとして感じられるようになってきた。

 

今までは、なんとなくそういうこともあるかもしれないけど、とどこかで他人事だった。それが一気に自分ごとに感じられるようになったのはこのニュースだ。

 

www.huffingtonpost.jp

 

同性婚裁判の原告だった方が倒れたとき、パートナーさんは病状の説明を医師から拒否された。HIV診療の拠点病院ですら、そうなのだ。


医師である私の友人に聞いた時、事前の意思表示が重要だし、実家の家族にカミングアウトしておいていざというときに家族づてに情報を共有してもらえるように準備しておいた方がいいよね、と言っていた。医師としては誰がキーパーソンなのかを把握しておく必要があるだけで、それが法律上の配偶者である必要はないんじゃないかなあ、と。


でも、こういうニュースを見ていると、そんなものでは足りないと思わせられる。
自助努力の範囲でどれだけ準備したって、受け入れる相手の側に知識がなかったり、病院組織自体が保守的な方針だったりすると、それだけでもうどうにもならない。
かかりつけの医師にカミングアウトしておいたって、出先で倒れて運び込まれた病院に理解がない可能性だってある。


はずれがいっぱい入ったくじをひかされているようなものだ。
基本的には健康で、意識を急に失うような事故や急病にかからず、実家の家族にも恵まれ、理解ある医療機関を見つけて確かな合意形成をしながら、穏やかに死を迎えられる確率って、一体どれだけあるんだろう?
気が遠くなる。
異性愛者で法律婚をしていればいつだって正解が書かれたクジを引けるのに。

 

この手のことって本当にたくさんある。たとえば相続のこと。
私はカミングアウトした時に実家の親から「相続権を放棄しろ」と言われた女だが、自分自身はというとパートナーだけに相続できるかどうかわからない。
公正証書で遺言を作ったとしても、請求した場合は法定相続人である親などが一部を受け取ることができてしまう。

www.hinata-office.com

正直「相続権を放棄しろ」だの「一生懸命育てたのになんでそんなふうになっちゃったの」だの言われた親に私が稼いだ金もなんとかして買った家もびた一文渡したくない。親が死ぬまで絶対に死ねない。

 

けれどなぜ、こんな心配をしなくてはならないのだろう。わざわざ、安くないお金と、手間をかけて、遺言書やらパートナーシップ合意契約書やら死後事務委任契約書やら任意後見契約やら、いくつもの公正証書を作らなければならないのだ?
結婚できれば、たった一枚の結婚届を出せばそれで済むのに。
(ちなみにあまり詳しくない方に向けて書くと、パートナーシップ制度では相続関係はカバーされない。配偶者控除も利用できないし遺族年金ももらえないし、あらゆる法律に書かれている「配偶者」として扱われることはない。)

 

結婚が愛の証だと思う人もいるけれど私にとってはそうではない。
ふたりで、安心して生きていくために必要なものなんだよ。
「万一の時のこと」を常に考えながら生きていたくなんてない。
本当に「万が一」のことが起こってしまった時に悲しい想いをしたくない。
ただそれだけなんだ。

 

「結婚」の意味を深く考えずに済む人たちが妬ましい。
なんとなく恋愛して結婚して、中身を考えなくても多くの制度の恩恵を受けられる。
多くの場面で説明もなく家族として扱われる。
そんな人たちが羨ましい。
べつに、あなたたちの権利を奪うわけじゃない。
よく保守の人たちがいうように「家族の絆」を壊したいなんて全く思っていない。
だから、私たちに結婚できる権利をください。
ほんの少しでいいから結婚できないカップルにはどんな困りごとがあるのか知って、自分が同じ立場だったらどう感じるのか、一人一人が考えてほしい。

 

明日とうとう、同性婚訴訟の最初の判決が下る。どうか私たちにとって前向きな結論となるよう、願いたい。

mainichi.jp